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図鑑の書評
Last updated April 14, 2002
ただ今、58

 最近、日本でも色々な図鑑が出ています。そんな中から「これ!」という一冊を選ぶのはなかなか難しいもんです。また、日本の図鑑に飽き足らず、海外の図鑑を取り寄せる人も多いのではないでしょうか。ここでは、実際に使用した感想も含め、数ある図鑑の中からいくつかについて書評を書いてみたいと思います。

 本ページご利用上の注意
 1.本ページの書評はあくまでも私見的なものですので、実際に購入された場合における食い違い等については当方は一切責任を負いません。
 2.上記理由により、転載、引用は禁止いたします。

 洋書購入にあたってのワンポイント・アドバイス
 1.購入前、できることなら、手にとって実物をご覧になってください。丸善紀伊国屋野鳥の会のバードショップなどでも、洋書を扱っていて、実物を見かける機会があります。私自身、これをやらないで失敗したことが多くあります。
 2.使用目的を明確にしましょう。最近は識別図鑑、フィールドガイドなどなど、さまざまなタイトルの付いた図鑑が出ています。
 3.安く買うためには、NHBS, Amazonなどのオンライン・ブックショップのご利用をお勧めします。ただ、どちらも膨大な量の本を取り扱っていますので、英語の苦手な向きにはお目当ての本を探すに苦労されるかも。友人等で頼み慣れている人を探してみましょう。
 4.それでも、現地購入が一番安い!マージン、輸送料がかからないことが最大の理由ですが、東南アジアのように、現地価格で欧米よりも安く売っていることがあるからです。最低限必要な本はオンライン等で購入しても、海外探鳥の際、現地で購入されることをお勧めします。
 5.海外で図鑑を購入するにあたって、大学の生協が案外狙い目です。運が良ければ、生協価格で販売しているので、現地価格よりもさらに一割引きで購入できる場合もあります。
 6.特にこだわりがなければ、ソフトカバーを買いましょう。ハードカバーというだけで、1-2割高になります。

アジア
タイトル 著者 発行年 出版元 コメント お勧め度
(5が最高)
Birds of Southeast Asia King, B.F. & Dickinson, E.C. 1975 Harper Collins 東南アジアを旅したことのある人なら一冊は持っていると思う。このサイズにこれだけの種類数を載せてある事には感心する。ただ、すでにアウトデイトの感は否めない。一部の掲載種のイラストがないこと、イラストが白黒の種があること、イラストが不正確な種(例えば、コシアカ&ズグロキヌバネドリ)があることなど、不満を感じる。Robson(下)が出た今、あえて持つ必要性を感じない。 ☆☆
A Field Guide to the Birds of Thailand and South-east Asia Robson, Craig 2000 New Holland 上に代わる東南アジア地域の図鑑。ベトナム、カンボジア、ラオス、タイ、ミャンマー、マレーシア、シンガポールの種類全てがカラープレートで描かれてあり、その水準も一定以上の線にあることにまず驚かされる。おまけに、この本、これだけの地域がカバーされているにも関わらず、安価である。
 テキストはCraig Robson一人で書かれており、その簡潔だが、よくまとめられている。亜種間の差異にも触れられているので、イラスト以外の亜種も読めばある程度の想像がつくようになっている。
 惜しむらくは2点。一つはイラスト。綺麗ではあるが、正確とは言いがたい。Pale Blue, Verditer, White-tailedのヒタキ類に、色以外の差異が全くないのは、イラストレーターがその鳥を知らないからだろう。(実際、記述では差異が述べられているのに。)
 また、イラスト間に差があることである。イラストレーターの個性をある程度揃えないと、イラスト同士の比較ができない。
 もう一点は分布図がないこと。分布の記述を読んでも、その地域の地理に明るくない限り、どこに分布しているのか今ひとつはっきり掴めない。Tenasserium, Annamと書かれても分かる人はほとんどいまい。
☆☆☆☆
A Field Guide to the Birds of China MacKinnon, John & Phillipps, Karen 2000 Oxford 英語の記述による、(ほぼ)オールカラープレートの図鑑としては、中国では初めてではないか。また、比較的安価で出されたことも評価したい。
カレン・フィリップスのイラストは好みが分かれるところだが、だんだんフィールドガイド向きの絵を描いてきているなという印象。ムシクイ、小型ツグミのページの絵はなかなか。ただ、一人のイラストレーターい頼った結果、古い絵と新しい絵の差があまりにも激しいのは残念。
 分布図がイラストの左側にあり、繁殖地、越冬地等の色分けがなされているのも良い。ただ、?マークがつくような分布が多いのは問題あるが・・・。
 面白いのは、今後記録されうる種を入れていること。日本でもこのような図鑑があっても良いかもしれない。
 記述は特に目を見張るものはない。フィールドガイドとしては及第点ではなかろうか。
☆☆☆
A Field Guide to the Birds of Korea Lee, Woo-Shin, Koo, Tae-Hoe & Park, Jin-Young 2000 LG Evergreen Foundation  延び延びになっていた野鳥の会と韓国の自然保護団体の共著による朝鮮半島の野鳥図鑑。サイズ、装丁とも「フィールドガイド日本の野鳥」とほぼ同じ。東洋館が印刷をしている。TEXTは李宇新氏など、現地の野鳥研究家によるもの。シンプルの一言に尽きる。イラストは日本でお馴染みの谷口氏。ただ、野鳥の会のスタッフたちがかなり手を入れただけあって、以前に比べ絵の質が格段に上がっているように思う。タヒバリ類の夏冬の羽の差異を描いていたり、コクマルガラスの白い個体を成鳥としている点などは新鮮。マニアにはカモメ類(ホイグリン、キアシセグロ等)、ジシギ類(尾羽のパターン)などチェック項目はありそうだが、フィールドガイドにしては充実した内容と言えよう。
 このコメントを書いている段階では、まだ書店等に並んでいないと思われるが、日本と共通種が多いので、価格次第では買っても良い本だと思う。
☆☆☆
Birds of Hong Kong and South China (6th edition) Viney, Clive, Phillipps, Karen & Chiu Ying, Lam 1994 Government Publication Centre  第6版まで出ている香港の図鑑。中国東南部もカバーしている。絵はおなじみのカレン・フィリップス。香港では毎年鳥類の報告書をまとめており、それに基づいてアップデートしていると思われる。小さな香港という土地だからこそできることだが、素晴らしいことである。
 記述はなかなかで、外見的な特徴のみならず、習性的な特徴も種によって述べられている。
 先にも述べたとおり、カレン・フィリップスの絵はちょっと癖があり、古いほどアクが強い。ホトトギスの絵なぞ、なんとかして欲しいものである。
 1994年から新しい版が出ていないのも気がかり。それまで4-5年おきには出ているから、そろそろ新版を出して欲しい。
☆☆☆☆
台湾野鳥図鑑 台湾野鳥資訊社他 1991 亜舎図書有限公司  458種を載せた台湾の野鳥図鑑。絵は谷口高司さんの絵で、安心をして見られる(一部正確性に問題はあるが)。高野図鑑系のイラスト、記述、分布図が見開きになった図鑑で、使いやすい。ただ、分布図は台湾の特産亜種については、他の地域が載せていないのが残念。
 頻度が一目で分かるのは親切。
 記述は簡潔。中国語で完全には理解できないが、漢字からおおよその内容が推察できる。でも、英語版があれば、もっと良いのに。
☆☆☆
A guide to the Birds of Thailand Round, Philip D.他 1991 Saha Karn Bhaet  Allenの本(下)が出るまでは大変世話になった本(タイとマレーシアは共通種が多いため)。
 高野図鑑型の図鑑で、見開きに分布図、解説が載っている(一部、そうなっていないところもあるが)。
 イラストは個性的だが、日本人では好感を持つ人が多い。特徴を線で示してあり、分かりやすいのも良い。難を言えば、ページによって大きさが全然違うこと。サイチョウなどはもっと大きく描いて欲しい。
 解説は可もなく不可もなく。鳴き声を斜字にしているのは分かりやすくて良いかもしれない。
 装丁は比較的良いのか、結構持ち歩いたわりに崩れていない。
 全体的に及第点だが、値段はもうちょっと安くならないか。
☆☆☆☆
A Field Guide to th Birds of West Malaysia and Singapore Jeyarajasingam, Allen & Pearson, ALan 1999 Oxford  マレーシア一の鳥キチ、Allenが出した本で、マレー半島部ということに限って言えば、初めてのまともなオールカラープレートのフィールドガイド(すぐ後に、Craig Robsonが出たが)。
 Allenがバードウォッチャーであるため、視点がバードウォッチャーのそれであり、記述内容に習性があるのは良い。また、その他の記述内容も外見、声、分布、頻度、生息地と分けて書かれてあり、読みやすい。
 イラストはあまり良くない。オオヒメコノハドリ、キホオゴシキドリなど、いくつかイラストのミスが目立つ。アニメチックであるという声も聴かれ、評価が分かれるところだ。
☆☆☆
A Photographic Guide to the Birds of Peninsular Malaysia and Singapore Strage, Morten & Jeyarajasingam, Allen 1993 Sun Tree Publishing  この地域の写真図鑑としては、唯一まともなもの。チメドリ類の写真が充実しているのには頭が下がる。写真の質はこんなもんだろう・・・。良いとはいえないが、種類数をこれだけ集めていることにむしろ評価したい。
 レイアウトは見やすい。写真、図入りで探鳥地の説明もあり、むしろ読み物として楽しめる。
 巻末のチェックリストは便利。
☆☆☆
A Photographic Guide to the Birds of Malaysia & Singapore Including Southeast Asia, The Philippines and Borneo Strage, Morten 2000 Periplus Editions (HK) Ltd.  タイトルは"Malaysia & Singapore"で東南アジアが付属という形になっているが、内容を見る限り、フィリピンや台湾を含めた東南アジア全体をカバーする写真図鑑。著者はこの地域では知られた人物だが、何回も同じ写真を使ったり、商売上手な人という印象が強い。写真そのもののクオリティーはあまり高くない。ピンぼけ写真も多いし、粒子の荒れた写真も多い。だが、それでもこれだけの種類の写真を集めていることは見事に尽きる。Palawan Peacock Pheasant, Asian Emerald Cuckoo, Large Frogmouth, Writhed Hornbill, Olive-backed Woodpecker, Azure-breasted Pitta, Bar-bellied Pitta, Gurney's Pitta, Green Cochoa, Slaty-bellied Tesiaなど、廉価版のフィールドガイドに登場したのは初めてと思われる種が多く、それだけでも購入価値はある。写真図鑑に付き物のキャプションミスは残念ながらあり、例えば、White-rumped Shamaの写真はメスではないか。余談だが、前述書でRed-eyed Bulbulとしていた写真がSpectacled Bulbulとして書いてある(正解は後者)。種の選択は一貫性がなく、図鑑としての利用価値はかなり低い。各種ごとの頻度も、果たしてどの地域を基準にしているのか、よく分からない。
 あくまでも見慣れない鳥の写真を楽しむ上ではお勧めしたい一冊。
☆☆☆
Birds of Singapore Hails, Christopher & Jarvis, Frank 1987 Times Editions  図鑑というよりは、むしろ画集といった方が良い。文章も読み物的な色彩が濃い。探鳥地ガイドは親切だが、図鑑として購入するなら、Allen(1999)の方が良い。
Pocket Guide to the Birds of Borneo Francis, Charles 1998 The Sabah Society  あまり良い図鑑のないボルネオでは、この小さな図鑑は案外重宝するかもしれない。イラストは古臭いと思っていたら、1950年代後半のものだった。博物学的で、綺麗だが、野外識別には?マーク。
 記述は最小限。安いし、コンパクトであるので、文句は言えない。
☆☆
A Guide to the Birds of Wallacea Coates, Brian, Bishop, David & Gardner, Dana 1997 Dove Publications  やはり図鑑空白地帯のインドネシア東部、スラウェシ、ティモール、フローレス地域の図鑑。
 掲載種は700種弱で、決して多くはないが、500頁を超える迫力のある本。また、東南アジアとオーストラリアの間の空白を埋めてくれる本で、両方の地域で生活した私には個人的に読んでいて楽しい本だ。
 イラストはダナ・ガードナー。この業界ではよく絵を描いている人だが、やはり評価は分かれると思う(なんだか、アニメチックで私はあまり好きではない)。それでも、ある一定のレベルには達している。
 プレート一枚に描かれている種数はさほど多くなく、一つ一つの絵が大きいのは見やすくてとても良い。
 解説も充実している。字間、行間も適度にあり、読みやすいのではないか。
 フィールドガイドとはしていないように、野外に持っていく本ではないだろうが・・・。
☆☆☆☆
A Field Guide to the Birds of the Indian Subcontinent Kazmierczak, Krys & Perlo, van Ber 2000 Pica Press インド亜大陸全域をカバーしたフィールドガイド。1300種も載っているのに、分厚さはCoates(1997)の半分しかない。まぁ、紙質の違いなどもあるが、どういう類の本かこれで検討がつくと思う。とにかく、種類を詰め込んでいて、記述は最小限度に抑えてある。字は小さくて細かく、英語の苦手な向きにはどうか。
分布図は色分けがきちんとなされており、見やすい。
 絵は悪くない。小さいのが難点だが。ただ、印刷は良くない。どうしたらこんな薄らぼんやりとした印刷になるのか・・・。最近コンピューター画像取り込みをした図鑑が増えているようだが、これはその失敗例かもしれない。
 インド亜大陸では、同時期に全く別の図鑑"Birds of Indian Sub-continent" (Grimmett, Richard他)が出版されており、こちらにもPocket Guideが安価で提供されている。
☆☆☆
Pocket Guide to the Birds of the Indian Subcontinent Grimmett, Richard, Inskipp, Carol & Inskipp, Tim 1999 Christopher Helm  オーストラリアへ行った際、本屋で安売りしていたので、約1500円で購入した。上述したGrimmett et.alのコンパクト版。文章は最低限に抑えられているが、これだけの種類数を載せていて、ここまでコンパクトなら文句は言えない。イラストの質はかなり高く、これといって目立ったミスは見当たらない。ノゴマのメスやツグミの絵が少し違和感を感じさせるが、向こうでは普通種ではないのだから、良い方だろう。イラストの点数が多いのも良い。シギ・チドリ類のイラストがやや小さいのが惜しい。
 分布図は上に似ている。分布図のみまとめて一ヶ所の頁に収めてあったりする関係で、全然関係ないところに分布図があるプレートもあり、やや見づらい。この地域の図鑑を一冊購入するのであれば、上よりはこちらをお勧め。
☆☆☆☆
Helm Field Guides: Birds of Nepal Grimmett, Richard, Inskipp, Carol & Inskipp, Tim 2000 Christopher Helm  "Birds of Hong Kong"サイズのペーパーバックのフィールドガイド。ネパールの普通種について、イラストと簡単な解説でまとめた本。迷鳥については、巻末に記述のみに留めてある。
 鳥キチRichard Grimmettの本らしく、コンパクトなのによくまとまっている。ネパールの概要、主要な生息環境とそこで見られる主な鳥、絶滅の恐れのある種、固有種、渡り、主要な探鳥地、保護、国内の主要な関係機関、用語解説、類似種の識別など、まさに痒いところに手が届く内容に脱帽である。
 イラストも綺麗である。ただ、正確かどうかは・・・。カモ類は全体的に今ひとつ。アカハジロやメジロガモの頭の形は変じゃないか。カワアイサオスの胸を淡桃色に塗ってあるのはなかなかだが。
 他の図鑑同様、イラストレーターが複数以上いるため、イラストの質にばらつきがある。

 解説は簡潔にまとめてある。分布図がないのはいくら小国ネパールの図鑑とはいえ、考えもの。海抜ゼロメートルから8000mを超える垂直面でも変化の多い国だけに、尚更欲しい。
 もう一点、分類学に基づいているとはいえ、野外で使いやすいオーダーとは言えない。カモの後にキツツキがあり、サギとシギ・チの間に猛禽やウが入る。フィールドガイドであれば、分類学は無視して使いやすいオーダーにして欲しかった。
 それでもネパール1カ国なら、Pica Pressのものよりもよほど良い。
 
☆☆☆☆
A Guide to the Birds of the Philippines Kennedy, Robert, et.al. 2000 Oxford  フィリピンでは実質初めてのまともな図鑑ではなかろうか。72枚のプレートに約600種が掲載されている。
 体裁は最近の図鑑に多いカラープレートが先、解説が後の形式。各種ごとに分布図も掲載されている。分布図はちょっと変わった形式を採用しており、緑が固有種、黄色が留鳥、紺が渡り鳥あるいは迷鳥、赤は留鳥及び渡り鳥を指すが、固有種を分布図に指し示す必要があるのか。文章中に記載されているのだから、十分に感じる。黄、紺、赤の分類についてはさらによく分からない。これだけの色を使うなら、季節ごとの分類にすれば良いと思う。
 イラストは複数のイラストレーターによるもの。残念ながら、あまり質が高いとは言えない。それでも種の認識には十分か。特にスズメ目で絵が稚拙なのは残念。
 解説はシンプルながら、比較的よくかかれているように思う。外観的特徴、類似種、習性、声、分布と項目ごとに分かれており、亜種に関する記載も多い。また、国外の分布についても細かく触れられている。各種の解説の頭に頻度と固有種かどうかが書かれてあるのは面白い。
 分類はやや古くないか。マレーセンニョムシクイ(Flyeater)は既にムシクイ類とは遠縁のグループというのが最近の通説。
 フィリピンはまだまだ探鳥に行くのには二の足を踏むところ。それだけに、このような図鑑でどんな鳥がいるのかを見るのは楽しい。Racket-tailという尾に飾り羽のあるインコの仲間、カワセミの仲間、カササギヒタキの仲間など、非常に美しい種が沢山掲載されている。絵だけでも楽しめる本だと思う。この本を見ていると、フィリピンの特殊性がよく分かる。
☆☆☆
日本  
フィールドガイド日本の野鳥 増補版 高野伸二著、園部浩一郎編 1989 日本野鳥の会  言わずと知れた定番図鑑。この大きさで見開きに図版、分布図、解説と全て載せてあるのは、今見ても画期的。記述も最低限に抑えてあるが、習性なども書かれていて、無駄がない。
 ただ、高野さんの絵は今となってはやはり・・・。また、増補版の谷口さんの絵との差が激しく、オオハシシギやカモメ類など、新たに加わった種との比較が出来ない。それに、増補版が出てからも10年以上経っていて、日本の図鑑に載っていない種が多すぎる。いい加減これに変わる図鑑が欲しいところ。
☆☆
鳥630図鑑 柳澤紀夫監修 1988 日本鳥類保護連盟  もともと価格が表記されていなかったところからすると、行政の予算で小中学校等へ寄贈することを目的に作られた図鑑なのだろうか。
 イラストは7人が分担して書いている。執筆の方は誰だろう。解説だの執筆だの色んな役職があって、誰が書いたのかよく分からない。
 イラストは概して悪くはないが、7名の個性がそれぞれ出すぎてしまった気がする。図鑑なんだから、種群は違ってもあまりにもイラストの雰囲気に差があるのはどうか。ところどころに写真が入っているのは面白い。
 文章は短いがよくまとまっている。特徴は赤線で引いてあり、わかりやすい。
 分布図は分布の広いものには世界地図を、狭いものには極東アジアの地図を使っているが、オオルリやサンコウチョウなどにはもっと狭い範囲の地図を使っても良かったのでは。
☆☆☆
野鳥の図鑑:水の鳥@A、陸の鳥@A 中村登流著 1986 保育社  写真図鑑でより多くの種を載せ始めたもののはしり。写真がないものはイラストで埋めている。
 文章は細かく、充実している。動きの記述は他にはなかなかない。
 ただ、このシリーズ、困ったことに間違いが多い。シギ・チドリ類の幼鳥と成鳥冬羽の識別はほとんど壊滅状態だし、若鳥という言葉の規定がきっちりできていない。さらに、種の同定ミスが結構多い。マダラウミスズメ(ウミガラス)、アメリカヒドリガモ雌(ヒドリガモ雌)、アメリカヒバリシギ(アメリカウズラシギ)等。
☆☆
Field Selection 水辺の鳥 日本野鳥の会監修 1992 北隆館  シリーズで2分冊(もう片方は野山の鳥)になっている。一つ一つの写真のカットは大きく、見やすい。記述は識別をメインにしてあり、今ひとつ物足りない。生息地や羽の色などは一律記述の下に記号化している。工夫は伺えるが、こういうのはどのくらいの人が見るのだろう。
 これもシギ・チドリ類の成幼の識別がきっちりなされていないし、若鳥のカテゴリーを間違って使っている。
☆☆
山渓ハンディ図鑑7 日本の野鳥 写真・解説: 叶内拓哉 1998 山と渓谷社  この本を持っている人は案外多いのではないだろうか。個人的には、この後出た2分冊の文一の本よりもこちらの方が色んな意味で優れていると思う。
 記述は細かく、なんでこんなものの声まで書いてあるのかというほどのところまで細部に渡っている。
 構成も真新しい。各写真ごとに記述が書かれていて、絵の図鑑でやるべきことを写真図鑑で取り入れている。
 ただ、これだけ細かいが故に、間違いが目立つのは残念だ。ぱっと見ただけでも、アビ(@、Cは成鳥冬羽ではなく、若鳥)、ハシグロクロハラアジサシ(ハジロクロハラ)、ヒメハマシギ(@は少なくともハマシギ)、ハマシギ(Dは幼鳥)、ハギマシコ(A、Cは夏羽個体)などある。

 分布図も?マークなものが時々ある。例えば、ヤイロチョウをFairy Pittaとするのであれば、こんな広い分布図にはならない(東南アジア、インドのものは別種)し、リュウキュウツバメはオーストラリアには分布していない。
 それでも、議論の的になる部分は多くても、現在の写真図鑑では最高峰のものの一つと
言える。
☆☆☆☆
野鳥小図鑑 高野伸二 1984 東海大学出版会  一昔前の写真図鑑で、現在入手可能かどうかは分からない。
 形態ごとに鳥を5つのグループに分け、それぞれの種に対して、1-2カットずつ配してある。
 記述は最低限だが、よくまとまっていて分かりやすい。また、成幼の区別等もさすがに高野さんだけあって、ほとんど間違いがない。(エリマキシギ等、一部おかしいものはあるが)
 残念なのは分布図がないこと。写真図鑑なのでそこにこだわる人はほとんどいないかもしれないが・・・。
 掲載種は316種。今の情報化時代では、この種類数で満足する人はいないだろうが、ビギナー向けには良い一冊。 
☆☆☆
The Birds of Japan Brazil, A. Mark 1991 Christopher Helm  アメリカのバードウォッチャーが日本での探鳥に使ったけど、いらないと言って、この本をくれた。
 はじめに、図鑑ではないと述べておこう。イラストはまとまってプレートに描かれているが、グループごとではないし、全種カバーには程遠い。

 文章はMark Brazil氏によるもの。なんだか記録集みたいだ。記録に関しては、「えっ、こんなん知らんぞ」というのが載っている。アシナガシギが小笠原で出てたなんてどれだけの人が知ってるんだろう。twitcherには楽しめる一冊かも。
☆☆☆
日本の野鳥590 写真:真木広造
解説:大西敏一
2000 平凡社  タイトルにうたっている通り、写真図鑑中掲載種数は最大。こんな本が3500円(税別)で売られるということ自体、時代が変わったなぁと実感させられる(昔なら、ハードカバーで5000円以上しただろうな)。形態は山渓の叶内氏の写真図鑑に近い。普通種ほど写真の点数が多い。分布・生息環境、特徴等を記載した記述に分布図がついていて、写真に対しても小さな解説がつけられている。構成そのものは真新しいところはない。
 
種の選定: まぁ、よくこれだけ多くの種を選んだなぁというのが実感。ただ、その反面、なんでこんなもんが入ってるの?って種も多い。マダラフルマカモメを採用するのには疑問を感じる。これを入れる前にもっと入れなきゃいけない種(例えば、ムナフシロハラミズナギドリとか)があるんじゃなかろうかという気がする。ただ、図鑑のコンセプト次第であり、とにかく種類数をということであれば、これで良いのだろう。
 写真:
一種あたり、1−5、種類によっては6点以上あるものもある。写真の質は、さすが真木氏だけあって、かなり高い。海外の写真が多いものの、普段目にすることのない鳥がこれだけ並ぶと壮観だ。常にフレームいっぱいの写真を目指す同氏らしく、どアップの写真が並ぶ。難を言えば、写真の点数、大きさに?マークがつくこと。カワリシロハラミズナギドリ、ハグロシロハラミズナギドリ、ハイイロペリカン、ハシブトゴイ等に3点、ケアシノスリに6点、エリマキシギに8点、ヒメクビワカモメに4点も使うのなら、ヒメクイナやシベリアオオハシシギに1点ずつ、ツルクイナのオスの写真がなしなど(単純に写真がそろわなかったのであろうが)というのは不釣合いに感じられる。
 
解説: 一種あたりの記述量はかなりのもので、叶内写真図鑑に匹敵する。亜種に対する記述、記録の量、声など、大西氏がこだわっているだけあって、正確かつ細かいという印象を受ける。亜種の記述、種の分類はかなり真新しいものがある。成幼の識別はさすがで、ぱっと見た限りは間違いが見受けられない。写真図鑑でキャプションミスがないのは初めてかもしれない。いくつか疑問点があるにはあるが・・・物足りないのは外見的特徴以外の記述が少ないこと。大西氏ならもっと書けたのではないかと思うだけに、やや物足りない。細かいことだが、一箇所、記述で気になったのは、カバイロハッカの分布のところ。「まれな旅鳥」とあるが、本来の分布域から大きく外れていることも含めて、「極めて稀な迷鳥」の方がよりふさわしいように思う。個人的には「篭脱け」と言いたいが、そこはいろんな見解があるだろうし・・・。
 分布図:
3段階くらいの地図を用意しているのだろうか。比較的正確に見受けられるが、いくつかおかしなところも。細かい指摘はさておき、見つかったものでちょっとまずいのは、クロツラヘラサギの分布。インドシナ半島全域が越冬域となっているが、越冬地はベトナムまで。タイでは数例の記録しかないはずだ。本種の越冬域はかなり限られており、九州、台湾、香港、ベトナムなどに点状にあるのみである。ヤイロチョウの分布図もどんなもんだろう。これはヤイロチョウをミナミヤイロチョウ、インドヤイロチョウ(?)と同一種と含める見方なのだろうか。
 総論:
この本はまさしくTwitcher向けである。とにかく、分布域からして、今後出ようが出まいが、出たものは見たい!というTwitcherの狩猟本能をかきたてるような本だと言える。ここまで偏った見方をした図鑑があるのも良いのではないだろうか。
☆☆☆☆
オセアニア  
Field Guide to th Birds of Australia Pizzey, Graham & Knight, Frank 1997 Harper Collins  残念ながら、この本をオーストラリアで使う機会はほとんどなかったが、オーストラリアで最新のデータが入ったフィールドガイド。一ページの種類数は少なく、一種ごとのイラストが充実している。猛禽類の正面からの飛翔形図があるのは親切。イラスト自体もやや癖はあるが、かなりの質と言える。印刷も悪くない。
 解説も特徴は斜め字で書くなど工夫がされている。一つ一つの種への記述も細かい。
 分布図もかなり正確だ。Carpentarian Grasswrenの分布の記述には感心させられた。ただ、?マークの残る種が何種かあるのは否めない。Mangrove Golden Whistler, Star Finch, Striated & Dusky Grasswrenの分布図は古くないか。
 あえて不満を言えば、こんなに分厚くて重い本をフィールドガイドと言っていいのかどうか。サイズは"Shorebirds"なみである。まぁ、オーストラリア人は大抵車に乗って、バードウォッチングに出かけていくから、本を車に積む分には差し支えないのかも。 
☆☆☆☆
Field Guide to the Birds of Australia 5th edition Simpson, Ken & Day, Nicolas 1996 Viking  数年おきに改訂版が出るオーストラリアの定番フィールドガイド。改訂版が出るたび、ちゃんと絵を更新するNicolas Dayの仕事には感心する(確かにどんどん良くなっている)。
 この本はとにかくイラストと印刷が良い。インコ類のページは色の鮮やかさに見とれてしまう。
 残念ながら、記事は読むほどのことはない。最低限の外見的特徴、声、生息環境くらいしか記述がない。
 後ろの読み物は面白い。個々の種群ごとに生物学的なことが書かれており個々の種の繁殖期まで書いてある。
 おそらく、世界の図鑑でもっとも早く系統分類学を導入した一冊だろう。
 これもフィールドガイドにしては分厚く、大きい。私はこの本はいつも書棚においていた。
 第6版が近年出版されたようだ。
☆☆☆
The Slater Field Guide to Australian Birds Revised edition Slater, Peter, Slater, Pat & Slater Raoul 1989 Gary Allen  オーストラリアのフィールドガイドとしては、最も古いものだが、携帯するには最も優れている。
 厚さは日本のフィールドガイドと同じだが、縦が長い。ただ、野外で片手で開くには十分軽く、コンパクトだ。
 イラストは平均的。悪くない。ただし、印刷は良くない。インコ類の色の出具合は不満だ。
 文字は小さいが、書かれている内容は濃い。分布に関する記述は充実していて、いつも感心させられる
☆☆☆☆
Reader's Digest: Photographic Field Guide to the Birds of Australia Flegg, Jim 1994 Reader's Digest  オーストラリア唯一(?)のフィールド写真図鑑。オーストラリアで記録されているほとんどの種を1−2点の写真で紹介している。
 とにかく、これだけの種を写真で紹介してあることは素晴らしい。ただ、写真の質そのものはたいしたことはない。動物園と明らかに分かる写真も多い。つくづく感じるのは、海外のバーダーの多くは生態写真に芸術性を求めないのか、許容範囲が広いのか、アップでさえあれば良しとする風潮がある。
 残念ながら、ご多分に漏れず、写真のキャプションミスは多い。シギ・チドリ類ではよく目立つ。また、モズヒタキ類のところでは、差し替えミスがある。
 解説は一般的。各種ごとに生息環境、渡りを簡単なイラストで示してあり、分かりやすい。
 オーストラリアの2冊目の図鑑として持つ分には良いと思う。
☆☆☆
Birds of New Zeland: Locality Guide Chambers, Stuart 1989 Arun Books  ニュージーランド旅行をしたときに買った一冊。写真図鑑の体裁を取っているが、一風変わっている。
 各種ごとに通常1点ずつ写真を載せてあり、解説を種の重要性、生息環境、分布、特徴、最も分かりやすい特徴、補助的な特徴(生息環境によるもの等)、代表的な生息地(地図つき)ごとに書いている。生息種数の少ないニュージーランドだからこそできる芸当か。
 一応分類ごとに並べてあるが、各種ごとのページ数が多く、野外では使いにくい。

 巻末に主要探鳥地の解説が写真つきであるので、少々重いものの、短期の探鳥旅行にはお勧め。
☆☆☆
ヨーロッパ  
Birds of Europe with Northe Africa and the Middle East Jonsson, Lars 1992 Christopher Helm  言わずと知れたLars Jonssonの図鑑。絵がとにかく良い。古い絵と新しい絵のばらつきがあるのは難点だが(古い絵はピンぼけ写真みたいだ)、新しいものは見ているだけでも十分楽しめる。
 記述はもともとスウェーデン語で書かれており、英語に翻訳された形になっている。ただ文章を羅列してあるだけの記述は読みづらく、工夫が欲しい。外見的特徴のみに終始した内容も野外ではあまり役に立ちそうにない。
☆☆☆
南北アメリカ  
Field Guide to the Birds of North America 2nd Edition National Geographic Society 1987 National Geographic Society  北アメリカで最もオーソドックスな図鑑。イラストは悪くはないが、なんとなく博物学的で古臭い。一種に対しての点数が多いのは良い。
 記述は外観的特徴、生息環境など、一般的。文章を羅列してあるのみで、あまり読む気を誘わない。
 それでも、アメリカの図鑑としては良い方で、一冊持っていても損はない。
 1999年に第3版が出たらしい。
☆☆☆
American Bird Conservancy's Field Guide: All the Birds of North America Griggs, Jack L. 1997 Harper Collins  縦長のカラフルな表紙が目立つ本。表紙にさんざん、「革命的なシステム」とか大仰なキャッチコピーが書かれているが、確かに新しいタイプのフィールドガイドだろう。環境ごとに環境の書き込みと共に、鳥が描かれている。カモ類のページなどは素晴らしい。
 イラストの質自体も高い。ただ、複数のイラストレーターを使っているので、種群ごとにばらつきがあるが。
  記述は可もなく不可もなく。最低限の情報が書かれているが、
外見的特徴に終始していて、面白みには欠ける。時々生物学的な知見をイラストを使って分かりやすく書いてあるのは評価できる。
 ビギナーからベテランまでと書いてあるが、実際はビギナー向けだろう。迷鳥の類の絵が小さく、北極圏の鳥はまとめて、小さな扱いしかしていないところからも、ビギナー対象という印象を受ける。
 この本、価格も良心的で、US$20を切っている(19.95ってダイエー価格!)
 普通種だけで良いというのであれば、上よりもお勧めしたい本。
☆☆☆☆
The Audubon Society: Master Guide to Birding Farrand, Jr., John (editor) 1983 Alfred A. Knopf  3分冊になったシリーズものの写真図鑑。
 右側に写真、左側に分布図と飛翔図等の挿絵、解説を配している。写真の質はまぁまぁ。それでも、この時代にこれだけの点数を集めてあるのはすごいというべきか。
 解説は詳しい。3分冊にしているだけのことはある。ただ、惜しむらくは、またしても外見的特徴にのみ終始していること。写真や絵を見れば外見的特徴は分かるのだから、習性や行動パターンなど、写真や絵に現れないものを書いて欲しい。
☆☆☆
Peterson Field Guides: Mexican Birds Peterson, R. T. & Chalif, E. L. 1973 ?  オーソドックスなピーターソンのフィールドガイド。イラストに矢印を入れ、識別点を示したおなじみのスタイルの図鑑。
 イラストのレベルは決して高くないが、とりあえず使用に耐えうるものである。ハチドリなど、雌雄を別ページにして、類似種同士を並べてあるのは親切。
 解説は最低限だが使いやすい。これで18.95ドル(またまたダイエー価格!)は悪くない。 
☆☆☆
A Guide to the Birds of Costa Rica Stiles, Gary, Skutch, Alexsander & Gardner, Dana 1989 Cornell University  コスタリカの定番図鑑。絵はおなじみのDana Gardner。一枚のプレートに入っている種類数が多く、Dana Gardnerの絵も本来の彼の水準からすると今ひとつ上手く見えないが、カバーしている種類数を考えると止むを得ないか。
 記述の方は素晴らしい。一種一種の解説が大変細かく、外見的特徴のみならず習性にも触れているのはとても良い。
 さらに、コスタリカの自然に関する説明が写真入りで述べられていて、とても分かりやすい。中米を訪問する際には持っていきたい本だ。
☆☆☆☆
アフリカ  
Birds of Southern Africa Sinclair, Ian, Hockey, Phil & Tarboton, Warwick 1993 Sasol  モザンビーク南部、ボツワナ、ナミビア、ジンバブエ、南アフリカなどをカバーした図鑑。
 イラストの質は悪くない。セッカ類など、識別の難しい種群には特徴が分かるように、線が引いてある。環境の描き込みの多く、見ていて
も楽しい。
 
解説はシンプル。外見的特徴は斜字体で記している。
☆☆☆
特定種群  
Shorebirds: An identification guide to the waders of the world Hayman, Peter, Marchant, John & Prater, Tony 1986 Croom Helm  言わずと知れた通称"shorebirds"。この本を持っている人はかなり多いのでは。シギ・チドリ類の図版を野外で使用するために、重い本なのに持って歩いたという人も多いのでは。かくいう私の本は、幾年かの野外使用によって、カバーはすでになく、装丁ももうボロボロである。着脱可能!と自慢している友人もいた。
 さて、余談はさておき、今やクラシックな本の部類に入りそうだが、依然この本の内容には驚かされることが多い。
 イラストは標準以上と言える。ややアジア地域のシギ・チドリ類のイラストが落ちるが、それでも実用に耐えうると言える。
 記述も細かく、特に野外での生態、習性の内容が充実している。例えば、キアシシギであれば、「大抵の個体では近くに寄らせる。危険を感じると、飛ぶよりも身を伏せることも多い。」などと書いてある。
 外見に関しても、各羽ごとに書かれてあり、どこまでも細かい。
 シギ・チドリ類を見る人は一冊は持っておきたい本。
☆☆☆☆☆
Gulls: a guide to identifcation 2nd Edition Grant. P.J. 1986 T & AD Poyser  上の本のカモメ版、と言いたいところだが、内容は更に専門的。個人的には、「こんなにカモメ見たくない」である。
 カラープレートによるイラストではなく、全て白黒写真。上同様、東アジア、中央アジアの鳥の記述、写真が少ないのはやや不満が残る。
 カモメだからか、記述は亜種と外見的特徴のみによる。カラーがないので(色キチかいな)、上以上に英語を読めない人には楽しめない本。

 明らかに上級者を対象にしており、イラストの点数も少なく、カモメマニア向きと言える。
 氏原氏のイラスト図鑑が出ている今、マニア以外には要らない本と思う。
☆☆☆
Parrots: A Guide to the Parrots of the World Juniper, Tony & Parr, Mike 1998 Pica Press  「世界のXX」シリーズのオウム・インコのみを集めた図鑑。日本でこんな本を使う機会は全くないだろう・・・。また、オウム・インコの仲間は野外識別に困ることはあまりない。(だからなのか、この本のタイトルにも「識別」という言葉がない)
 とにかく、まずはこれだけカラフルな鳥の絵がぎっしり詰まっていることに目を奪われる。亜種まで細かくイラストが描かれている。
 記述も細かく、生態や保護状況にまで触れている。推定総個体数に触れている図鑑ははじめてだ。(必要かどうかはともかく・・・)
 分布図は大きく、見やすいが、ところどころ?マークがつく。コダイマキエインコやズグロサメクサインコの分布はそれぞれやや古いのではないか。
 種の扱いについてもYellow Rosella(アカクサインコの一亜種とする説が有力)を独立種とし、Adelaide Rosella(同)を混血扱いとするなど、やや一般的ではないように感じる。

 それは良しとしても、イラストレーターを複数以上使ったことの弊害が露骨に現れた図鑑だ。Dan Powellのイラストは図鑑向きとは言えないと思う。
☆☆☆
Fairy-Wrens and Grasswrens Rowley, Ian & Russell, Eleanor 1997 Oxford  オーストラリアムシクイばかりを集めた図鑑。
 分類や生態について詳しく書かれていることから、むしろ鳥類学的な本と言える。
 図版は素晴らしい。ノドグロオーストラリアムシクイやその近似種の絵がちゃんと描き分けられている。
 生息環境の写真がカラーであるのも面白い。
また、各種の生息状況についての細かい記述も述べられている。
☆☆☆
A Field Guide to the Rare Birds of Britain and Europe Lewington, Ian, Alström, Per & Colston, Peter 1991 Harper Collins  これも日本のバードウォッチャーにはおなじみの図鑑。なんでイギリスの迷鳥の図鑑を日本人バードウォッチャーが買うのかは、内容を見てみると分かる。イギリスで迷鳥であるもので、日本でもだぶっているものが多く、日本での識別にも使えるからである。
 Ian Lewingtonのイラストはかなり高いレベルで、野外でも安心して使える。発色が悪いのは、印刷のせいか。
 解説は識別一辺倒。細かい字でとことん細部にまでこだわっている。はなから珍鳥の図鑑と銘売ってあるのだから、これはこれで良い。内容自体もしっかりしているが、やはり向こうで記録の少ない鳥の内容はあいまいだ(シマノジコなど)。
 総論としては、それでもこだわりを持った図鑑として高く評価したい。
☆☆☆☆☆
The Macmillan Field Guide to Bird Identification Harris, Alan, Tucker, Laurel & Vinicombe, Keith 1989 The Macmillan Press  上の本といい、この本といい、ヨーロッパのバードウォッチャーはよほど細部にこだわるのが好きならしい。
 基本種の類似種ばかりを集め、徹底した比較論を述べた本。
 イラストの質はかなり良い。Lars Jonssonほどではないが、非常に細かい、正確なタッチで、思わず見とれてしまう。上手い絵は増えたが、正確な絵が多いという点で評価したい。やや残念なのは、絵に古い新しいがあるのか、古い絵(?)がやや雑なこと。
 解説はやはり識別一辺倒。識別図鑑としているのだから、これはこれで良いのだろう。
 ただ、この本にしても、上にしても、イギリスのバードウォッチャーというのは、3冊も4冊も図鑑を抱えて野外に出るのだろうか。図鑑ばかり持って野外に出たら、重いことこの上なしだと思うのだが。
☆☆☆☆
The Macmillan Field Guide to North Atlantic Shorebirds Chandler, Richard 1989 The Macmillan Press  こだわりのMacmillanからもう一冊。この本もおなじみの方が多いだろう。"Shorebirds"とこの本を持って、よくシギ・チドリ類を見に行ったものである。
 写真識別図鑑で、一種一種の写真点数が多いので、評価できる。
 解説はシンプル。各羽ごとの説明がなされているが、"shorebirds"と較べて特に優れているとは感じない。
 写真図鑑として一冊ある分には良いと思う。
☆☆☆
A Field Guide to the Waterbirds of Asia Bhushan, Bharat他 1993 日本野鳥の会  この本が出来た経緯について、詳しくは知らないのだが、普通のフィールドガイドとして作られたのではないであろうことは推察がつく。おそらく、アジア地域の水鳥保護を目的とし(アジア各国に無料配布された)、Wetlands Internationalで主催するアジア水禽センサスの普及を狙ったものであろうし、この本出版後に本格的に動き出したアジア太平洋水鳥保全戦略にも絡んで編纂された本と思われる。従って、巻末には、このサイズの本には珍しく保護状況が記されている。
 
前書きが長くなったが、従って、この本を普通のフィールドガイドとして評価することはあまり相応しくないことを承知の上で簡単に述べる。
 イラストは谷口高司氏、解説は日本から園部氏、臼井氏、日比氏、その他アジアの鳥類関係者の手による。
 このサイズにこれだけ多くの水鳥種が綺麗なイラストと共に載せられていることは素晴らしいと思う。ただ、種の選定方法が非常に不可思議なものになっている。例えば、海洋性のカモメ類のヒメクビワ、クビワカモが載っていない。迷鳥というカテゴリーならヒメハマシギやカナダカモメは載っているし、海鳥とするなら、同属のほかのカモメ類も同じだ。
☆☆☆
A Field Guide to the Waders of Britain and Europe with North Africa and The Middle East Colston, Peter & Burton, Philip 1988 Hodder & Stoughton  "Rare Birds"でおなじみのPeter Colstonの本。シギ・チドリ類にこだわった本で、選定種は"North Atlantic Shorebirds"に近い。
 イラストの質はまぁまぁ。ただ、"Shorebirds"やLars Jonssonなどの絵を見ると、「買えない」という気になるかも。トウネンとニシトウネンの夏羽の差異が上手く描き分けられていないのだから、野外ではこの段階であまり使い物にならない。
 解説はさすがはPeter Colstonである。比較論も含めて、結構細かく書いてある。このサイズでこれだけ書いてあれば十分だろう。
 だが、"Shorebirds"というバイブルがあるシギ・チドリ類の図鑑の中で、敢えてこの本を持つ意味は薄いように感じる。
☆☆☆
カモメ識別ハンドブック 氏原巨雄・氏原道昭 2000 文一総合出版  日本が誇る、カモメマニア、氏原氏の識別ハンドブック。25種の日本産(?)カモメ類に、世界のカモメの識別について触れている。
 氏原氏のイラスト(というよりも、まさに絵!)は芸術的ではあるが、個性的・・・。おそらく好き嫌いが分かれるだろう。ただ、さすがに日本でも一番カモメを見ているであろう氏原氏だけに、絵は正確。惜しむらくは印刷が良くないこと。最近の図鑑は全てスキャナーで読み込んだものを印刷しているんだろうが、灰色の濃い薄いが決め手になるようなカモメ類では、この印刷はどんなものだろう。アカアシミツユビは明らかにこの印刷よりも1-2段階くらい濃い。
 解説は外見上の識別一本に絞ってある。数字や印刷の色を変えるなど、工夫はなされている。
 総論としては、この値段でここまでマニアックな本が出ることはすごいもんだと思う。このような本が商品化されること自体、それだけtwitching, agingの裾野が広がっているのかなと実感する。ただ、方向性の出ていない大型カモメ類の分類を敢えて行うことはどんなものだろう。これはむしろ分類学の問題なのだが、最近の系統分類学を用いる方法によれば、例えば、オーストラリアの色とりどりのインコ類で3種が1種になったり(アカクサインコ)、4種が1種に統合されたり(コダイマキエインコ)している。これらはいずれも外見的に全く異なる特徴を有しており、習性も分布も異なる。大型カモメ類の最近の細分化の動きはこの動きに逆行するもので、個人的にはここまで細分化することに対して、意味をあまり感じない。また、一般に対して混乱を招くという意味でも、もうちょっと扱いに注意して欲しいという気がする。
☆☆☆
番外編  
Birding Indonesia - A Bird-watcher's Guide to the World's Largest Archipelago Jepson, Paul & Ounsted, Rosie (edt.) 1997 Periplus Edition  見ているだけで楽しいインドネシアのバードウォッチングガイド。とにかくレイアウトと写真が綺麗。眺めているだけで、まじめに読んだことはないが、インドネシアの探鳥地のみならず、保護状況、サイチョウにまつわる文化的背景など、読み物としても面白い。巻末の膨大なチェックリストを見て、如何に鳥の多い国なのか思い知らされる(国土が広いから当たり前か)。 ?(未使用につき、不明)
海外バードウォッチング1 - ボルネオ島 キナバル山の鳥 中安均・浅間茂著 1995 文一総合出版  ボルネオのキナバル山のみに絞った、写真図鑑件探鳥ガイド。文一らしい、えらくマニアックな本で、この後、マダガスカル、東アフリカなどの本が出る。
 海外の野鳥の写真を日本人が日本人向けに出版しているというのは画期的だ。しかし、残念ながら本書はこのシリーズの本としては、写真の質が最も悪いように思う。ピンボケ、ブレ、露出不足の写真を合計すると、半分もまともな写真がない。これで2,700円が高いかどうかはともかく、出版物としてはお粗末ではないか。東南アジアの写真の撮りにくさは痛感しているが、それならば、無理やり種類数を載せるのではなく、探鳥ガイドとしての色合いをもっと強め、環境写真を増やせば良いのに・・・。
☆☆
A Birder's Guide to Maine Pierson, Elizabeth, Pierson, Jan Erik & Vickery, Peter 1996 Down East Books  米Maine州の探鳥地ガイド。ペーパーバックで、ハシグロアビの表紙が目を引く。州内の各探鳥地について、場所によっては地図つきで説明している。宿泊施設の記述があるのは親切だ。アプローチの解説はできれば同一ページ内に地図つきで欲しいところ。 ?(未使用につき、不明)
Birds of Massachusetts Veit, Richard & Petersen, Wayne 1993 Massachusetts Audubon Society  "shorebirds"なみの分厚さのマサチューセッツ州の鳥類生息状況をまとめた本。各種類ごとに州内の生息状況(分布図つき)、出現頻度について書かれている。こんな本が36ドルほどで売られているアメリカのバードウォッチング界に感心させられる。 ☆☆☆☆
ABA Birding Guide: Birdfinder: A Birder's Guide to Planning North American Trips Cooper, Jerry 1995 American Birding Association  ABAのシリーズもの。巻末に掲載探鳥地を地図つきで書いてある。文章がだらだら続いているだけで、特に文章に工夫がこらされているわけじゃないので読みづらいが、こういう本を買う人は気にしないのだろう。
 地図はなかなか精緻で見やすい。
?(未使用につき、不明)
ABA Birding Guide: A Birder's Guide to Eastern Massachusetts bird observers 1994 American Birding Association  ABAのシリーズもので、アメリカ全土の主要探鳥地を説明している。表紙裏面に地図で場所をおおまかに示し、細かい地図も含んでいる。通常のこのシリーズと異なり、どちらかといえば、海外からアメリカに来るバードウォッチャーに、いくつかのコースを提案し、それに従ってどんな種が見られるのかを記述しているという印象。アメリカで探鳥旅行を計画する際、参考になるかもしれない。 ?(未使用につき、不明)
A Birdwatcher's Guide to Malaysia Bransbury, John 1993 Waymark  Waymarkのシリーズもの。東マレーシアも含めたマレーシア全土の探鳥地を網羅している。マラヤ大学構内のような身近な場所から、タマン・ネガラやダナンバレーのような僻地まで、42箇所について、地図、探鳥地の概要、出現可能種、アクセスと宿泊施設、ベストシーズンなど、細かく触れている。同じシリーズものの下よりも使いやすくできている。また、出現可能種が、開けた環境、上空、低層部、高層部などに分けて述べてあるのは面白い。
 残念なのは、すでに状況が変わって、探鳥地としてふさわしくない場所が何箇所か載っていること。こういう本は定期的にアップデートされることが望ましい。
☆☆☆
Where To Find Birds In Australia Bransbury, John 1987 Waymark  Waymarkのシリーズもの。オーストラリア全土の探鳥地を収めてある。各州ごとに、主な探鳥地を載せているのだが、正直、オーストラリア滞在時、この本を使って役に立ったと実感したのは指折り数えるほどしかない。有名な国立公園を中心とした記述で、本当に鳥を見られる場所の記述が少ないように感じたからだ。また、一般的に見られる鳥は各探鳥地ごとに書かれているが、この手の本を買う人は、見るのに少し苦労するような鳥の探鳥地を知りたいはず。それを満たすには情報量が足りないように感じる。
 それでも、初めてオーストラリアに行く向きには良い。
☆☆
Where to Find Birds in Northeast Queensland: 2nd edition Wieneke, Jo 1992 不明  ケアンズ近郊の探鳥地ガイド。地域を絞ってあるので、マイナーな探鳥地まで細かく書かれている。装丁はいい加減だが、A$15では文句も言えない。
 安い本なので、ケアンズ観光のついでに一冊購入すると便利。
☆☆☆
Birdwatcher's Guide To The Sydney Region Roberts, Peter 1993 Kangaroo Press  シドニー近郊の探鳥地ガイド。コンパクトでよくまとまっている。各探鳥地ごとに、概要、主な鳥、設備、アクセス、探鳥ポイントなどが書かれている。地図が必要な場所には簡単な地図がついているが、もうちょっと分かりやすい地図が欲しいところ。
 巻末に各種類ごとに細かい記載があるのは便利。
☆☆☆☆
Birding Costa Rica Forrester, Bruce 1996 不明  コスタリカへ行く前にオーダーしたのだが、着いたのは帰国後。というわけで、全然使う機会がなかった。まぁ、いずれにしても使うことはなかっただろう・・・。個人の探鳥報告で、よくぞこんなもんを販売していると思った次第(インターネットオーダーでこれまで最も失敗した本)。
 約1ヵ月半で12箇所を回り、440種余りを記録しているので、それはそれで読むべきところはあるが、販売物とするにはあまりの装丁だ。
 
New! Birds of Australia's Top End Goodfellow, L. Dennis & Stott, Michael 2001 Scrubfowl Press  ダーウィン市内をウロウロしているときに見つけた本。イラストはあまりにずさんなので、図鑑と呼ぶ気はしないが、NT内の鳥の生息環境や探鳥の際のヒントなどがかかれており、同地域訪問の際に持っていると非常に便利な一冊。ただ、これで$29.5はちょっと高い。 ☆☆☆
New! 鳥のおもしろ私生活 ピッキオ 1997 主婦と生活社  実はかなり以前から持っていた本だが、うっかり書評を書くのを忘れていた。図鑑というには構成がかなり特徴的なのでこの欄に載せる。掲載種は少ないが、一種ごとに声、みつけ方、生活、魅力について丁寧に書かれている。特に、生活の部分は細かく書かれており、読んでいて知らなかったと実感させられることが多い。また、この本の特徴として、各ページごとにイラストが描かれているが、これが微笑ましくて良い。巻頭に季節ごとに各環境で見られる鳥を示しており、また巻末にはカラ、キツツキ、カッコウ類の識別、生活史も書かれている。掲載種の順はあいうえお順であり、分類は無視されている。初心者にはむしろこの方が分かりやすいかもしれない。本書の巻頭にある通り、この本は一日に一種でも多くの鳥を見ようとする人向きではないが、個々の鳥の生活を知るには非常に良く出来た本といえよう。97年の出版だが、私が購入した段階(2000年)で10刷とあるから、そこそこ売れているのかもしれない。最近の図鑑は識別しか書かれていない本が多いから、そういう意味でも貴重な本。 ☆☆☆☆☆

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